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重度歯周病の症状・診断と治療法

歯周病専門医による正確な抜歯判断

歯周病専門医に求められている最大の仕事は、その歯を残せるのか、残せないのか(Hopeless)を正確に診断することです。数多くの学術論文(Evidence)と実際の臨床経験に基づき、診断しています。

重度歯周病の症状・診断

歯周ポケットの深さが6mm以上、歯のグラグラ揺れる幅が2~3度(2.0mm~)以上のもの。X線写真を撮ってみると、歯槽骨の吸収が歯根の長さの3分の2以上にもなっているものです。

歯肉は大きく腫れ上がり多量のプラークと歯石が沈着しています。レントゲン写真では、歯を支えている骨が、かなり少なくなっています。そのため、歯の動揺は大きく、歯の移動、歯の離開が目立ちます。

重等度歯周病の治療方法 〜歯周基本治療〜

歯磨き指導

最も基本となるのは患者さんご自身がおうちで行う歯磨きです(ホームケア)。歯ブラシの仕方、歯間ブラシ、フロスの使い方など丁寧にお伝え致します。

スケーリング・ルートプレーニング

歯ぐきの上に見えている歯石、歯周ポケット内の見えない歯石の、徹底した除去を行います。

抜歯

冒頭でも述べましたが、 この判断が非常に難しいと同時に、歯周病専門医の腕の見せ所です。歯周病に罹った歯は、残せば良いというものではなく、改善できないのであれば残せば残すほど歯肉と歯を支える骨が失われていきます。お口全体の咬み合わせが崩壊するのを防ぐためにも、抜歯をお勧めする場合があります。

ただ、他医院で抜歯と言われた歯が、必ずしも抜歯が必要とは限りません

歯周病専門医として、可能な限り、歯周病に悩む多くの患者さんを診て行きたいと思いますので、お気軽に、セカンドオピニオンにお越し下さい

 

歯周組織検査(再評価)

歯周基本治療の結果、どの程度改善されたかをチェックします。この状態で充分に改善されていれば、治癒と評価します。一方、この時点で改善が不十分な場合は、次の「歯周外科処置」へと進んで行きます

歯周外科

フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)

歯肉を剥離して目に見える状態で歯の根(根面)を清掃し、プラークを根絶します。

切除療法

歯周ポケットを外科処置によって切り取って、清掃性を高める手術です。これによって歯周ポケットが浅くなり、プラークが住み着きづらい環境を作ります。

再生療法

歯を支える骨が溶けてしまっている(骨欠損)場合に、薬剤を塗布して骨を再生させる方法です。これによって他医院で抜歯と診断された歯も残すことができる場合があります

※治療上のリスク:術後に移植した自家骨または、人工骨が歯肉の縫合の裂開により感染することがある。

【GTR法】

歯周病により破壊された歯槽骨(顎の骨)を回復させるために、体に害のない生体膜を使用した治療です。外科的処置が必要になります。 詳しくは、当院におたずね下さい。

【エムドゲイン法】

歯の組織や骨を含む歯周組織を誘導再生させるための活性物質EMD(エナメル蛋白)を使用する治療方法。外科的処置が必要です。

※エムドゲイン(Emdogain?)はビオラ社(Biora AB 本社:スウェーデン マルメ市、2003年よりスイスのストローマン(Straumann)の傘下)により発売されているエナメルマトリックスデリバティブを主成分とする歯周組織再生誘導材料。  スウェーデンのカロリンスカ研究所で、ビオラ社の創立者のDr.Hammarstromらにより開発された。 日本では1998年に厚生労働省の認可がおり、2002年に改良版であるエムドゲインゲルが認可されている。 原則健康保険が利かない自由診療の治療であるが2007年に先進医療に指定されました。

歯周組織検査(再評価)

歯周外科治療の結果、どの程度改善されたかをチェックします。

口腔機能回復治療

歯周病によって失われたお口の機能(咬み合わせ、そしゃく、見た目、発音など)を回復するための、歯列矯正(→ 矯正歯科のページへ)による咬み合わせ治療や修復治療を行います。その際、プラークの住みやすい環境を作らないように、また、咬み合わせの力を全体にしっかりと分散して、一部の歯に負荷がかからないように調整します。

歯周組織検査(再評価)

口腔機能回復治療の結果、どの程度改善されたかをチェックします。この状態で充分に改善されていれば、治癒と評価してメインテナンスを開始します。一方、この時点で改善が不十分な場合は、再度の歯周外科治療を含めて治療計画をブラッシュアップしていきます。

メインテナンス

3〜6ヶ月に1度を目安として定期的ご来院いただき、クリーニングを実施。適宜歯周組織検査(再評価)を行って行きます。

重度歯周病の治療例

患者さんの情報

患者

50代 女性

初診

2006年5月29日

主訴

・前歯の歯肉の腫れと歯の動揺

・ブラッシング時の出血

家族歴

両親は、う蝕、歯周病とも感受性は高くなかった。
姉妹はなく、一人っ子である。
現在は母のみ健在で、特に全身疾患の既往は認められない。

 

初診時のお口の状態

口腔既住歴

近所の歯科医院で、6ヶ月に一回、定期的に検診と歯石除去の処置を受けていたが、約1年前より、硬い食べ物を噛むと臼歯部の違和感と全体的に歯が浮いた感じがあった。 定期的にかかりつけ歯科医を受診しているにもかかわらず、徐々に歯の動揺に加えブラッシング時の出血が認められるようになり、気になって夫に相談したところ当医院を紹介され受診した。

歯周組織所見

歯肉の色はやや赤みを帯びたピンク色で厚い。 肉眼的には、歯周病が進行しているようには見えないが、やや全顎的に咬合低位である。 う蝕は少なく、補綴物による修復も少ない。
著しい垂直的動揺と挺出、および垂直的な動揺が認められる。 また、前歯部における歯間空隙が認められる。

臨床診断(2006年日本歯周病学会の分類に準ずる)
・広汎型重度慢性歯周炎

治療時の留意点

まず、歯周病や、歯周治療についての情報提供を優先に治療計画を立案した。
義歯の装着およびインプラントを希望しないと同時に一時的にでも義歯を使用したくないとの本人の強い意向から、最終補綴物は全顎ブリッジで行うことにした。
全体的に歯周支持組織の破壊が高度であることから、ホームケアを中心としたプラークコントロールに加え、歯肉縁上、縁下のスケーリング・ルートプレーニングによる炎症性因子の除去を行った。
その後、保存不可能な歯の抜歯を行い、咬合高径の維持と咬合の確立のためのレジンテンポラリーブリッジを装着した。
再評価により残存した歯周ポケットの除去を目的とした歯周外科を行った。
歯周基本治療後の再評価時に抜歯を予定したが、本人の強い希望で保存し経過観察を行うことにした。

治療後のお口の状態(2007年6月)

メインテナンス時の問題点とその対応

    1. 継続的なプラークコントロールの徹底をする。
    2. 歯根露出面および軽度脱灰歯頚部のう蝕予防のためのフッ化物の塗布を行う。
    3. 咬合の変化による知覚過敏の症状を経過観察する。